古谷利裕 個展「bilocation/dislocation」6月6日(木)-16日(日)
古谷利裕 個展「bilocation/dislocation」
6月6日(木)-16日(日)
OPEN: 木曜-日曜
13:00-19:00(最終日18:00迄)
画家・評論家の古谷利裕による約8年半ぶりの個展を開催します。
2015年の展覧会「人体/動き/キャラクター」で古谷氏は、「抽象化された人体の動き」のスケッチを型により反復的にレイアウトしていくことで、個々の作品・作家・フレームから自律したキャラの生成と運動の立ち上げを試みました。
近年はその延長線上で、いろがみや付箋、色鉛筆やクリアホルダーなどを用いた「文房具絵画」シリーズを制作しています。
日常的な素材を組み合わせ、スキャン画像やポリプロピレン袋への封入などで展示されるこの作品群は、極めて簡素でありながら、図と地の交替、フレームやレイヤーの操作、そこでの思弁性と身体性の関係など、これまで古谷氏が検討してきた幾つもの主題が凝縮されたものでもあります。
これら「文房具絵画」シリーズと、「人体/動き/キャラクター」をさらに発展させた(水彩絵の具・油絵の具を使用した)作品群を組み合わせることで、ここ10年ほど古谷氏が取り組んできた制作の核にあたる部分を一望できる展示空間を立ち上げます。
※本展覧会は、古谷利裕 連続講座「未だ充分に尽くされていない「近代絵画」の可能性について(おさらいとみらい)」の実施、ならびに初小説集『セザンヌの犬』(いぬのせなか座)の刊行とあわせ、制作集団・出版版元「いぬのせなか座」と劇団「Dr. Holiday Laboratory」が共催します。
古谷利裕 個展「bilocation/dislocation」トークイベント
①2024年6月8日(土) 14-15時 井上実+古谷利裕
画家・井上実さんをお招きし、ひとつひとつの作品についてじっくりと話します。
②2024年6月9日(日) 14-16時 永瀬恭一+古谷利裕 古谷さんの作品を論じた「多次元性新生児──古谷利裕の作品がゴミまたは糞であることの可能性」(https://worldend-critic.com/2023/10/21/multidimensional-neonate-nagase/…)が話題となった画家・永瀬恭一さんをお招きし、これまでの古谷さんの活動を振り返りつつ、今回の展覧会の試みに迫ります。
いずれも入場無料、定員15名(以降は立ち見となります)。 会場:OGU MAG(東京都荒川区東尾久4-24-7)
ご予約は以下予約フォームからお願いいたします。
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ステイトメント
古谷利裕「bilocation/dislocation」
1.
遠くにある近いものと、小さくて大きなもの
※これは撞着語法ではなく、次に挙げる可能な16パターンの中から選ばれた字義通りの意味を持つ。
(上の文には、下の16の可能性が――「地」として――内包されている。)
遠くにある遠いものと、小さくて小さなもの
遠くにある遠いものと、大きくて大きいもの
遠くにある遠いものと、小さくて大きなもの
遠くにある遠いものと、大きくて小さなもの
近くにある近いものと、小さくて小さなもの
近くにある近いものと、大きくて大きいもの
近くにある近いものと、小さくて大きなもの
近くにある近いものと、大きくて小さなもの
遠くにある近いものと、小さくて小さいもの
遠くにある近いものと、大きくて大きなもの
遠くにある近いものと、小さくて大きなもの
遠くにある近いものと、大きくて小さなもの
近くにある遠いものと、小さくて小さなもの
近くにある遠いものと、大きくて大きいもの
近くにある遠いものと、小さくて大きなもの
近くにある遠いものと、大きくて小さなもの
2.
色や形は、それ自身の固有のキャラクターを持つ
組み合わされた「色と形」、組み合わされた《組み合わされた「色と形」》は、それ自身の固有のキャラクターを持つ
3.
そこにあるもの(たとえば人の動き)を、ここ(紙の上)に移動させる
紙の面積はたいていオリジナルの人物のスケールより小さいが、「動き」そのものに大小はあるのか
たくさんの「動き」を集めて組み立て、どこにもなかった動きを作る
作ったものをコピーして組み立て直して、どこにもなかった動きを作る
コピーしたものを大きくしたり小さくしたりする(大きくしても別に「動き」は大きくならない)
大きくしたものと小さくしたものを組み合わせて、どこにもなかった動きを作る
そうして作ったものを手で描き写したり切り刻んだりして組み立て直し、どこにもなかった動きを作る
そうして作ったものを切り開いたり折りたたんだりする
切り開いたり折りたたんだりしたものを組み立てて、どこにもなかった動きを作る
そうして作ったものを、コピーしたり、手で描き写したりする
(イメージを操作しようとしているのではなく、イメージの器となるもの、スケール感や距離感、つまり時空間のありようそのものを組み立て直そうとしている)
4.
二次元のものを三次元上で操作する(切ったり、貼ったり、裏返したり、ひねったり、折り曲げたりする)ことは、二次元のものを二次元上で操作する(描く)こととはかなり違う。三次元のものを三次元上で操作することと、三次元のものを四次元上で操作することと同じくらい違う(アナロジー)。
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プロフィール
古谷利裕 Toshihiro Furuya
1967年生まれ。画家、評論家。1993年東京造形大学卒業後、画家として2002年「VOCA展」(東京)、2004年「韓国国際アートフェア・日本現代美術特別展」(ソウル)、2008年「組立」(埼玉)、2011年「第9回アートプログラム青梅」(東京)、2015年「人体/動き/キャラクター」(東京)など、各所で活躍。
評論家としても、美術・小説・映画・アニメなど特定のジャンルに限らない活動を展開。『世界へと滲み出す脳』(青土社、2008年)、『人はある日とつぜん小説家になる』(青土社、2009年)、『虚構世界はなぜ必要か? SFアニメ「超」考察』(勁草書房、2018年)など多数の著書が刊行されているほか、2010年~2019年には「東京新聞」美術評を、2020年には「文學界」新人小説月評を担当。
1999年11月には、自身のホームページにて「偽日記」を開始。以降「はてなブログ」への移転を挟みつつ24年以上にわたって連日更新されている同ページは、ひとりのアーティストの長期的な日記として、また日本の芸術・思想の特異なアーカイブとして、小説家・保坂和志をはじめ多くの人々から高く評価されている。近年は、「社会的チートの撲滅&死の恐怖からの非宗教的解放」をテーマとする集団「VECTION」の主要メンバーとしても活動。
2024年1月からは連続講座 「未だ充分に尽くされていない「近代絵画」の可能性について(おさらいとみらい)」を開催。6月には初の小説集『セザンヌの犬』(いぬのせなか座)を刊行。
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